第38回 東京国際映画祭 ウィメンズ・エンパワーメント部門 公式出品作品
26歳で難治性不妊症と診断された気象キャスター・千種ゆり子が、「若いうちから自分の身体に関心を持ってほしい」という強い思いのもと企画した本作。監督は、“柔らかい社会派”として認知されづらい悩みを丁寧に描き続けてきた野本梢。エグゼクティブプロデューサーには、稲村久美子を迎えた。
本作が焦点を当てるのは、「不妊治療=40歳前後の夫婦」という一般的なイメージにおける若年層の現実である。
20代の未婚女性が突然の診断に直面し、身体の悩みを誰にも相談できないまま、周囲との関係に悩み、自分を見つめ直していく姿を描く。
2024年より東京国際映画祭に新設された「ウィメンズ・エンパワーメント部門」公式出品作品としてへ正式招待された注目の一作。
これは身近で、わたしかもしれない物語である。
25歳の深山はるか(道田里羽)は、仕事やボランティアに奔走しながら、恋人との結婚を夢見てアクティブに日々を過ごしていた。ある日、同窓会で再会した友人から不妊治療中であることを打ち明けられ、ショックを受けたはるかは、勧められるまま婦人科を受診し「女性なのに男性ホルモンが多い」と診断されるも、忙しさの中で対症療法的に片付けてしまう。しかし、不調を抱えながら迎えた大切な日、大量の出血に見舞われる。昔から持ち前の行動力で他者のために奔走してきたはるかだったが、自身の悩みは誰にも共有することができない……。そんな折、はるかは薬局で万引きを疑われている中学⽣・優佳⾥(滝澤エリカ)と出会う。彼氏に依存し、家族や友人と距離を置く優佳里。はるかは、そんな優佳里や周囲の人々を通して、今までの自分を見つめ返しながら、未婚のままひとり静かに疾患と向き合っていく。
道田 里羽 as 深山 はるか
滝澤 エリカ as 牧 優香里
井上 拓哉 as 秋田 誠治
平川 はる香 as 藤井(鈴木) 香織
中山 来未 as 長沢 葉奈
定本 楓馬 as 尾木 晃司
野上 天翔 as 筒井 雄大
幹てつや(かりすま〜ず) as 深山 賢二
逢坂 由委子 as 牧 悦子
大貝 瑠美華 as 牧 まりん
美桜子 as 梅野 桜子
牧 海斗 as 磯部 太一
村上 りおん as 元木 紗香
関口 蒼 as 小松 里帆
大木空 (アバンティーズ) as 日向 颯太
大塚 菜々穂 as 本田 三保
大川 大 as 黒木 純
橋本 紗也加 as 高城 ひかる
坂田 遥香 as 相川 由奈
土屋 直子 as 秋田 芳恵
小沼 朝生 as 秋田 仁誠
二田 絢乃 as 尾木 柚花
小沢 まゆ as 河合 彩子
藤 主税 as 三谷 咲人
AOI(G.U.M) as 玉木
中原 シホ as 三好 結子
岡本 詩織 as 上原
しゅんしゅんクリニックP as 須田 涼
小島 彩乃 as 杉村
村田 啓治 as 内藤 タケシ
大高 洋夫 as 城島 穣
田村 魁成 as 川島
千綿 勇平 as オサム
蔦 陽子 as ハルコ
岡本 宗史 as ヨヒト
元木 大介 as 塾の先生
熊谷 真実 as 長沢 葉子
映画『藍反射』
(2025/日本/103分)
道田里羽
滝澤エリカ / 井上拓哉 平川はる香 中山来未 定本楓馬 野上天翔 幹てつや(かりすま〜ず)
中原シホ 逢坂由委子 大貝瑠美華 大木 空(アバンティーズ) 美桜子 牧海斗 大塚菜々穂 村上りおん
土屋直子 小沼朝生 坂田遥香 大川 大 橋本紗也加 関口 蒼 小沢まゆ 二田絢乃 村田啓治
小島彩乃 岡本詩織 原恭士郎 藤 主税 千綿勇平 蔦 陽子 AOI(G.U.M) 田村魁成
しゅんしゅんクリニックP 岡本宗史 元木大介 大高洋夫
熊谷真実
監督・脚本 野本梢
企画・プロデュース 千種ゆり子
エグゼクティブプロデューサー 稲村久美子
撮影 知多良 照明 斉藤徹 録音 横田彰文
衣裳 大賀のぞみ 高橋菜々子 ヘアメイク 鎌田優子 鈴木ゆうすけ
助監督・スチール 小関莉沙 撮影助手 金子愛奈 助監督 田村魁成
音楽 TAKEYA メインビジュアル撮影 Fujikawa hinano
配給 キノパトス
制作 エイジアムービー
COMMENT
コメント
誰にも言えずに抱える身体や心の不安、そのひとつひとつにそっと寄り添いながら、誰もが決して他人事とは思えない温度感で繊細に描こうとしている。そんなやさしさと静かな強さを持った作品でした。自分自身や大切な人の身体を大切にするとはどういうことか、向き合うきっかけになってほしいと思いました。
山崎 怜奈/タレント
私自身も不妊治療を経験し、子どもを授かることは叶いませんでした。だからこそ、はるかの葛藤や戸惑いに深く共感しました。決して他人事ではない。自分の心と体に向き合う時間の大切さや誰かを思いやるきっかけを静かに教えてくれる作品でした。
陣内 貴美子/スポーツキャスター
社会に生きづらさを感じている人々を描いてきた野本梢監督。マジョリティによる同調圧力が、社会的に立場の弱い人たちを生み出している要因なのだとすることで、マイノリティが存在するメガニズムを映画の中で可視化させてきた。重要なのは、女性が男性から受ける抑圧だけでなく、今作のように同性から受ける抑圧も同等に描いてみせている点にある。そういった多角的な視点によって構築された物語は、わたしたちが無意識のうちに偏狭になりがちであることを自戒させるのだ。
松崎 健夫/映画評論家